平成二十一年 二月完成の平家琵琶 銘・白鷺

5月15日に神戸のギャラリーバルカで平家琵琶鑑賞会が行われました。
語りは鈴木まどかさん。



5月17日には姫路文学館でも行われました。これは同時に開催されている、画家・安野光雅氏による「絵本平家物語の世界」展の一環として行われたものですが、平家詞曲の会の後、安野氏の絵を見ると、絵の中の人物、あるいは風景が動いて見えたのです。
これは親しく感じたと云い換えることもできるのでしょうが、それは安野氏が描く世界の朗らかさにあったのかもしれません。平家物語は合戦の場面も多く登場するのですが、その合戦の場面も、安野氏が描くとほのぼのとしているのです。それはちょうど、平家語りが淡々と語られていくのに似ているとも云えます。また簡略化された能舞台の装飾と同様とも云えます。このことは以前の随想でも述べたことですが(参照)、芸術表現というものは、現実のようにリアルであればあるほど芸術表現の効果は薄れてしまうのです。見る者、あるいは聴く者の想像力を妨げるのです。
たとえば、能面のように、見る角度によって、あるいは見る者によって様々に見える、あるいは感じてもらうためには能面はリアルであってはならないのですね。西洋音楽でいえば、うっとりとする美しい旋律は判りやすいので、多くの人の心を捉えるでしょうが、判りやすい旋律ではない地味な音楽に、たとえばシューマンのように深く崇高な世界がある場合があります。あるいはマーラーの交響曲のように宇宙レベルの波動そのもの、というスケールの大きな音楽もあります。音楽の世界で旋律的ではないというのは、美術の世界では表現がリアルではない、ということと同義であると云えます。そういうことが、鈴木まどかさんの平家語りを聞きながら改めて確信できたのです。







平家琵琶 銘・白鷺

2010年作 銘・月影

2012年作 銘・相応


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