出土砥石について

2008年のある日、砥石の夢を見た。これまで砥石に夢中になっていた時でも夢にまで見ることはなかったので、どうしてなのかな・・と思っていたら、翌日の新聞で淡路島
あわじしまの弥生時代の遺跡五斗長垣内遺跡(ごっさ・かいと遺跡)から石器を作っていた工房跡と鉄器工房と思われる建物の跡が発見された、という記事が載せられていて、その遺跡からは砥石も出土したと書かれてあった。これは砥石から呼ばれているにチガイナイということで、現地説明会に行ってきました。



その遺跡は淡路島の北西部に位置する
兵庫県淡路市黒谷
くろだに五斗長ごっさにある弥生時代後期(西暦50年〜200年)の垣内かいと遺跡。夢で見た砥石は数種類あったような気がするが、はっきり覚えているのは最初に出てきた神社の境内にある手水舎のような所に水に浸されて置かれている仕上砥石。
色は薄い茶色地にこげ茶色の環状模様が入っているもので、大きさは巾10cmほど、長さは20cm以上あった。研ぎ面は日本刀を研ぐもののように膨らみが付けられている。
もう一つは、これは明らかに伊予砥で、これは中砥。白地に細かい斑点がある。大きさは最初に出てきた仕上砥よりもはるかに長く、60cm以上はある。巾と厚みは10cmはあった。
その砥石の持ち主が、山から切り出した様子を説明してくれていて、斜め30度ほどの傾斜の切り通しの崖にこのようになっていた、という話のとおりに、手許にあったはずの砥石が崖に収まっているのです・・
これをなんとか譲ってもらえないかと頼んだら、2千円でいいよ、と軽く返事が来て、いや、それでは安すぎるから1万円で買いますと私・・。頭の中で、「これは長いので、三つに切って一個1万円で売れるゾ。一つは手許に残して二つ売ったら1万円の儲けじゃ・・」 などと腹黒いことを考えていたら、もわ〜っと砥石は消えてしまったのでありました・・



これは但馬砥
(たじまと・中砥)に似ているが、よく似た石英質の石もあり、これはこちらの篠山川でも見かけるもので、石英質の石だったら砥石としては使えない。私の感じでは石英質の石ように見える・・砥石として使った跡も見られないので、疑問が残るところ。



そして夢に見た伊予砥にそっくりの色あい、質感の石。中砥としてはやや細かい粒子のように思える。硬さもやや硬めの印象を受け、大きさは砥石としては小さく、長さ8cmほど。



これは光沢のある緻密な石質で、日本に産する砥石ではこのようなものはまだ見たことがない。かなり硬質な感じを受ける。砥石として使ったのならば、最終仕上げとして使われたものだと思われる。大きさは縦・横それぞれ8cmほどで、これも砥石としては小さめ。アメリカ産のアルカンサス砥石によく似ている。
後日2021年8月にこの石は愛知県に産する三河油石ではないか、
とご教示頂きました。ブログで紹介しました


これが三河油石です。確かによく似ています



これも長さ10cmほどの砥石としては小さなもので、厚みも薄い中砥。京都丹波産の青砥によく似ている。 参照

その後の遺跡の様子



兵庫県神戸市中央区の雲井遺跡の発掘の様子。
2009年2月


ビルの建設現場から発見された、縄文時代から鎌倉時代に及ぶ遺跡。神戸の中心街である三宮一帯は広く古代の遺跡が広がっている。この写真は北東の山側を背に南西の海側に向かって撮影。



これは砥石として使われたと思われる石の一つで、元々は銅剣の鋳型として使われたものらしい。石の中央部に見える深めの溝は鋳型としてのものではなく、明らかに勾玉の背や、管玉の丸い部分を磨いたものと思われる。この石は、砥石としては粒度は細かく、おそらく仕上げ磨きに使われていたものと思われるが、現在使われている砥石では同様のものを私は目にしたことがない。また、京都産の仕上げ砥石のように側が層にはなっていないので、頁質粘板岩系ではなく、三河名倉砥のような凝灰岩系の感じ。



この面を見ると
(向かって右側の断面)上部から半分ほど切り込みを入れ、そこから打ち割っている形跡が見られる。銅剣の鋳型なので、本来はもっと長いものだったはずで、それを玉の加工職人が砥石に転用したものと思われる。砥石は、硬い粒子が粘土状に結合しているもので、容易に削り加工をすることができる。それで、このような石を鋳型として使ったのだと思われる。






裏側も砥石として頻繁に使われた跡がある。
因みにこれと同様のものが、昭和22年に福岡県の
志賀島勝馬でも発見されている(参照)。
こちらは兵庫県尼崎市で発見されたもの。
これも砥石として使われた形跡があるらしい。
そしてこちらは佐賀県吉野ヶ里遺跡から出土している様々な鋳型。



これも砥石として使われていたと思われるもの。
これは上の石よりは石質はやや荒く、現在の中砥として
使われている但馬砥に似ている。



これは上の「雲井遺跡」から2kmほど西にある生田
いくた遺跡から2006年に出土した小型の砥石。これは上に紹介した砥石と石質がよく似ている。穴が開けられているのは、ここに紐を通して携帯用として使っていたことも考えられる。



以下、日本の古代遺跡から出土している砥石を紹介しておきます。























最後に参考として、これは古代西アジア
(ハッスーナ)の遺跡から出土しているもの。
2011年3月、福岡県春日市から出土している砥石をブログで紹介。
2010年8月、出土砥石を入手。詳しくはブログで紹介(参照 その2)。
兵庫県三田市三輪・餅田遺跡で出土した砥石

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